3社目:トマトの出荷工場での流れ作業~就労期間1年4カ月~

3社目・トマト出荷工場での流れ作業~仕事が遅いのでリストラされる~(就労期間1年4カ月)

前職の家電屋を辞めて1年間ニート状態になっていた。どんな人でも短期間で仕事に失敗すればショックを受けると思う。僕の場合はウェイターとPC販売員を短期で連続失敗したため、社会人としてやっていく自信を失った。

 

辞めるに至った内容が内容だけに、もう「働きたい」とも思わなくなり何となく家で過ごす日々。ゲームをして遊んだり、釣りに出かけて旬の魚を狙ったり。独学のプログラミングで作品を作るなどしているとあっという間に時間が過ぎた。

 

ただ同居している両親や祖父母は黙っていなかった。「若い人に迷いが出るのはわかるけど、1年も無職なんだからそろそろ頑張りなさい」と言われるようになる。

 

仕事の悩みを話した事もあったけど、両親からは「仕事というのは、みんなしんどい思いをしている。誰でも普通は失敗から始まる」とありきたりな言葉で理解をしてもらえる状況にすらなかった。

 

僕もこのまま無職では生きて行けない事は分かるので、仕方なく就活を再開する。ひとまずハローワークでの職探しの再開だ。

 

採用されてもされなくても、面接を受けるのは無料なので動くべき

 

ハローワークでは登録しているデータで、これまでの職歴が反映される。仕事を探している相談をすると「以前2社を短期で辞められていますが、その後はどうされていたのですか?」と聞かれて困った。

 

放っておいて欲しいけれど、色々と相談に乗ってくれる職員さんだったので話をしてみた。すると「1つの事にしか集中できない」など困っている事を告げると、「逆に1つの作業をずっとやり続ける仕事はどうか?」と提案された。

 

そこで急募されていた、僕のような若い男性を探しているという会社の求人を見せられた。仕事内容は「工場勤務」と書かれてあって、主な業務は工場内で、トマトなど青果物の選別、出荷加工、バーコード貼りなどの流れ作業全般だった。

 

募集形態はアルバイトだったが、今は雇用形態を選べる立場にないと思い、まずは継続の実績を作ろうと誓った。

 

工場などの職種は時間もきっちり定時で終わりやすいと聞いた事や、時給も高く970円くらいはあったので面接を受けてみる事にした。ただハードルがあったのは、履歴書の件だ。1年もニート状態にあった僕を雇ってくれるのか不安で仕方が無かった。

 

正直に書くべきか、それとも伏せておくべきか・・。ハローワークの職員さんに相談してみると「素直に書いてそれで落とされたら仕方が無い。頑張ってみましょう」と励まされる。

 

そして「面接を受けるのは無料なんだから」とも言われる。言われてみれば、受かるかどうか悩むより試しに受けてダメなら考える方が合理的で賢いとも思った。悩んで動けない人ほど、ダメ元で受ける方が結果に繋がると思う

 

職員さんもいる手前、嘘はつけないので真実を羅列させ、短期で2回辞めている事や1年のニート空白期間がある事を記載した。

 

面接当日は緊張しまくった。何しろ1年ぶりに働こうとしている。面接官とのやり取りは、想像していた通り「短期間で仕事を辞めていた事」と、「空白のニート期間」についての質問だった。

 

過去2回の職歴は、自分の不器用さで辞めざるを得なかった事を伝えた。そして、工場作業のような流れる仕事なら1つの事に集中して取り組めるため自分の仕事スタイルには合っている自信があるとも伝えた。

 

この時もまた、堂々とした人を演じきって成功したのか面接官の人から「ここでは集中力のある人が強いです。こちらで前向きに採用を決めさせて頂きます」とだけ言われ手ごたえのある面接を終えた。やはり経験則だが、堂々とした態度は面接官の採用基準の1つになっていると思う。

 

後日、自宅に電話があり採用が決定。「今度こそ頑張るぞ」という思いで立ちあがった。

 

トマトの傷レベルがよく分からない~マニュアルが無いと困る例~

 

工場で働き始めると覚える事は意外と少ないと感じた。「ある程度の流れがある」と事前に言われていたが、役割は基本的に決まっているのは本当なようだ。発達障害で単純作業が好きな人は、工場勤務を狙い撃ちするのもありなのではないだろうか

 

トマトをメインに扱っている工場だったので、トマトが流れてくると傷のある物は選別して別の場所に置いていかなければならない。スーパーなどで、お客さんに出せない商品になるので集中して分けて行く。

 

またひたすら出荷用の段ボール箱に綺麗にトマトを揃えて並べて行く。バーコードシールを決まった場所に貼りつけて行く。こういった作業を、各部署で行いそれらがまとまって工場は運営されている。

 

工場長から各部署の作業場を案内されて、「どこに入っても1つの仕事を集中して頑張って欲しい」と叱咤激励された。いきなり全ての部署は任せられないので、最初は簡単なところから覚えて行く形となる。

 

基本中の基本として、最初はトマトの選別レーン。当たり前だけど商品の状態が見極められないと、どこの作業ポジションにもつくことができない。理由は簡単で、キズなど傷みがあれば即座にキレイな商品と入れ替える必要があるからだ。

 

そこで新人はトマトの選別という目利きをすることになる。これは簡単と言えば簡単なのだけど、僕にはかなり難しいものだった。僕は話を聞いた時には「集中さえしていれば楽勝だ」と思って作業に取りかかったが問題を起こしてしまった。

 

上司から言われていたトマトの傷の状態について、"どこまでがセーフでどこからがアウトなのかという判別"に困った事だ。最初にサンプルとしてキズ傷みがあるトマトを数個見せられて、この時は「なるほど!これが出荷できない例だな」と確認できる。

 

ただ、僕の場合はイレギュラーに弱いというのがネックになった。「Aの状態はオッケーで、Bの状態は悪い」そこまでは理解しているが「じゃあ、このCの状態はどうなの?」と考え込んでしまう。

 

いわゆるマニュアル化の問題で、かなり細かい指示が無いと僕には判別がつかない

 

最初は上司や周りのスタッフに聞くのだけど、数日もすると「もう何日目?いい加減に自分で判断しないと仕事にならんぞ」と先輩のおじさんスタッフに叱られる。曖昧なまま出荷するとクレームが来るからこそ、きっちりとした見極めがしたいのだけど・・。

 

傷の判定にこだわり過ぎるとレーンの作業に遅れてしまう。仕方が無いので、不安なまま勘に頼るようなトマト選別で頑張った。

 

継続勤務して評価されているかと思いきや・・

 

バーコードを貼って値段が分かるようにする作業もきつかった。"だいたいここに貼る"というのが決まっている位置に貼りつけるのだけど、段ボールがあまりにも多すぎてかなり急いでやらないといけない。

 

延々とシール貼りをする事には苦労はないが、ズレないようにきちんと貼りながら、かつ周りの人たちと同じような速度で作業ができない。3人でグループになって、かけ足でバーコードが貼りつけられるのだけど、貼られて完成した段ボールが積み重なっていく量の差が開くばかり。

 

「ゆっくりやってたら朝まで終わらないよ~頑張って兄ちゃん~」とパートのおばちゃんからも煽られる。グループでやれば僕の作業量が少なく、仕事をサボっているように見えるのでツライ。しかし職場の人は良い人が多かったので、文句と言っても毎日言われる事も無いのが救いだった。

 

しかし残念だったのは、この工場の経営が上手く行かなくなっていた事だ。1年を過ぎた頃、工場長に呼ばれて「一生懸命に頑張っている事はわかるんだけど、ここでいちばん仕事量で差が出てしまうのは気がついているよね」と言われた。

 

事実上のクビ宣告だった。バイトの時給など下げられないまま、ずっと雇われていたので負担だったのだろう。もう1人だけ僕と同じタイミングで辞める事になる人がいたが、やはりその人も作業速度が遅い人で一緒にリストラされた。

 

ただ、能力的な面でクビにはなったが、僕から辞めなかった事は少しだけ自信になった。1年4カ月で離職せざるを得なかったが、辞めた理由も「経営悪化」という理由にできるし少し気持ちは楽だとポジティブに捉える。

 

工場勤務での流れ作業は、比較的に募集も多いので仕事を見つけやすい。発達障害で臨機応変さを求められるのが苦手な人は向いているかもしれない

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