6社目・携帯ショップでの販売員~就労期間1年~

6社目・携帯ショップでの販売員に障害者枠で入る(就労期間1年)

発達障害の診断から障害者手帳を取得していたので、少しでも特性への理解をしてくれる職場を探すようになった。そこで自然とハロワにある障害者の担当窓口へ向かうようになる。

 

一般枠の職員さんには、これまでの履歴から「すぐに仕事を辞める人」と思われているような気がして近づきにくかったが、障害者窓口に変わった事で職員さんも変わり気分一新で挑めた。

 

これまでの職歴を見た職員さんは、「大変な中でよく頑張られていましたね」と労ってくれた。

 

僕の発達障害の特性を伝え、どういう事が苦手なのかを聞いた職員さんは障害者求人を見せてくれた。障害者求人というはこんなに多いのかと驚いたくらい無数にあった。一般枠の人には見えないようになっているので当然といえば当然だが、知らない世界を覗いているようである。

 

しかし、「この職場で働きたい」という気持ちにならない仕事が多かった。行きたいと思っても高度な資格や、基本的な経験のある人しか募集されていなかったりと障害者枠といえどそれなりに稼ごうと思えば難しい

 

もちろん障害がある前提なので、一般職の人と同レベルの賃金を貰えるとは思っていなかったが、時給も最低賃金の求人が並んでいる。

 

働けても収入が少ないと将来への不安が募るため、「それなりの給料は稼ぎたい」という気持ちだけが先行する。どれも障害年金などを受給している人が前提で働く場所なのかもしれないと感じた。

 

そこで「やっぱり一般枠での仕事を探そうと思います」と障害者窓口で告げて、一般求人に行こうとした。すると職員さんから次のように言われる。

 

携帯販売の会社は時給もいいですし、受けられてみてはどうですか?

 

携帯販売のスタッフに転職

 

僕は耳を疑った。携帯販売はメジャーな仕事だ。かつ あれだけ料金プランが重なり、色んな事を聞いてくるお客さんに説明しないといけないとなる業種。「僕に出来るわけがない」と断った。

 

しかし、職員さんも押してくる。どうも僕に向いていると思ったらしく、理由が「携帯販売は"マニュアル第一主義"の仕事だから」という点らしい。

 

素人目には複雑な事を覚えて、臨機応変な対応をしているように見えるが、実際は全国規模でやってきた実績やそれらの接客データから、お客さんからの質問には殆ど答えられるような業務マニュアルがある。

 

ここで問題になるのはマニュアルの記憶力だが、記憶する事には自信があった。また説明も"記憶さえしておけばやれる"とも言われる。不安なのは、臨機応変さだがその辺りは携帯販売の会社と相談をしてみてはという話になる。

 

不安しかないが、時給は高いのでやってみる気になった。この時で時給1050円と普通に1000円オーバーしていたと思う。今まで1000円オーバーの仕事などしていないので、これなら生活も安定すると考えた。

 

面接にはすぐさま応じてもらえ、店長さんからは「話し方が丁寧だし、人当たりも良さそうですね」と褒めてもらえた。マニュアルを覚えれば仕事は問題ないのか質問をすると、「記憶できるのであれば大丈夫だと思いますよ」と返答があった。

 

他に不安な面でいうと、”物事の同時処理”もあるがどうしても無理な時は周りのスタッフを頼ってもらえばいいと言われる。まず最初に研修があるので、その研修をやってみると基本がわかると言われ採用そのものは即に決まった。

 

研修に関してはバッチリだった。事前に店長からも教えてもらったり、周囲の先輩も親切な人ばかりで、記憶が楽しい僕にとっては苦痛もなく受けられた。「こういう感じならやれそうだ」と気持ちよく販売員として店頭に立つ事になる。

 

障害者枠であるが故の配慮

 

さっそく店頭での仕事が始まる。実際に職場に入って感じた事だけど、研修の座学でマニュアルを叩きこめた自信は少し薄れてしまった。お客さん相手というプレッシャーは常に持たないといけないからだ。

 

僕の場合は、ある程度のマイペースでゆっくりした手順を踏まえて働いて良い契約なので、同時行動はなるべく配慮してもらっている。

 

例えば、「接客中にお客さんが入ってきて混雑していたら、誰かが要件を聞きご案内する」など僕がやると慌ててしまうのでお客さんへの挨拶だけで済ませてもらうとか。実際に動くのは僕以外の誰かになる。

 

また携帯ショップは手続きが細かいので、話しながらパソコンを打つのが大変だ。そこで、僕の場合は1つ1つ説明して作業に移るという形を取らせてもらう。

 

これも携帯ショップに行く人はわかるが、受付でコミュニケーションを取りながらパソコンを打っていく動作が求められるのだけど、僕はお客さんのお話を丁寧に伺ってからパソコンを打つやり方を優先させてもらった。

 

店長から「人の話を丁寧に聞けるタイプだね」と言われていたので、その部分を活かしてお客さんの話にきっちりうなずいたりしながら作業をした。コミュニケーションとパソコンへ打ち込む同時作業ができなくても丁寧な接客が出来ればカバーできるとここで学んだ

 

これがもし、特性を理解されないまま全てを同時進行させていたらパンクして混乱していただろう。「複数の事を同時進行するスキル」は僕には無いが、事情を汲み取っての接客をさせてもらったので助かった。

 

イレギュラーに弱い僕だが、携帯販売会社のマニュアルは役に立った。携帯販売に関しては、家電量販店と違い「値引きは出来ない」の一点張りで済む。お金の話の流れがあっても、明らかに規則化された料金表が用意されているのも良い。

 

僕が説明するために記憶したマニュアルに加えて、直接お客さんに「これが料金となります」と目で確認して貰えてやりやすい。

 

しかし、それでもイレギュラーは起こる。それは「感情的になって怒り気味に来店する人」の存在だ。携帯電話は調子が悪くなる事もあるが、買ったばかりの人などからしてみれば不良品を掴まされた感覚になっている。

 

その怒りの矛先は、どうしても身近にいるショップ店員になりやすい。

 

この時ばかりは、いくらマニュアルがあっても難しい面がある。普通にコミュニケーションを取る事と違い、怒りとかクレームを言いたい感が相手から伝わって来るのだから。変にこちらが委縮すると付けこまれるので、変な汗を掻きながら頑張り続けた。

 

そんな頑張りを見せた携帯販売の仕事ではあったが、とある事で上手く行かなくなる。それは、周りの従業員とのコミュニケーションが取りにくくなっていった事だ

 

空気が読めない事が悪化して人間関係に疑心暗鬼

 

今になって後悔しても遅いのだけど、業務時間も終わり店も閉めた後、書類整理などの仕事は正社員の人たちがやっていた。それにも関わらず僕は一切手伝う事がないまま帰っていた。正社員の人の仕事なので、僕はやらなくていいのだけど人間関係としての重要性に意識がなかった。

 

言われないと気がつかないところが僕にはあるのだけど、定時が来たらとりあえず僕の仕事は終わる。

 

よく周りから「空気が読めてないよね」と言われる事があるのだけど、その場面がここで出ていた。正社員の人がやる仕事ではあったのだけど、一声だけでも「僕も何かお手伝いしましょうか?」と言えていれば変わっていたのかもしれない。

 

帰る時はその配慮が足らず、挨拶を丁寧にする事にばかり意識があったため「お疲れさまでした」だけしか言えていなかった。

 

これに気がついたのは、勤務を初めて半年経った時期くらい。店長から「仕事を残ってやって欲しいわけではないけど、他の先輩が残って何かやっていたら配慮の声だけでも掛けてみる事も社会では必要だよ」と言われた事だ。

 

これに限った事では無い。普段から昼休憩など、いちばん最初に優先的に僕は休ませてもらったりしていた。いちばん下っ端だからという理由だったが、同じように上の人に僕も配慮をする必要があった。自分に集中し過ぎて、同僚の動きに目が行かなくなっていた事を悔いた。

 

この時を境に、あまり僕と周りが話をしないのは、嫌われているのではという疑心暗鬼な心理に繋がって行く。仕事もこれが影響してか、「周りにフォローされっぱなし」という環境に見えてしまい仕事の失敗が増えるようになる。意識の集中ができない状態は続いた。

 

具体的に怒られる経験こそしなかったが、どこか同僚の人と距離感が出来てしまい埋められない重たさから1年間で辞める事となる。仕事も人間関係も同時にこなすという課題が残っての退職だった

 

人間関係の事で悩む人がいるなら、相手の気持ちを時々でいいので意識するといいかもしれない。僕は自分の事にだけ集中していないと仕事がおろそかになるので、さじ加減の難しさを感じてはいる。

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